2023/09/04畜産動物の悲哀

過去の新聞(2023年6月10付朝日新聞朝刊別紙)に畜産動物の福祉向上に取り組まれている団体代表の方(NPO法人「アニマルライツセンター(ARC)」代表理事 岡田千尋さん)の記事が掲載されていました。


記事によりますと、採卵養鶏農家で鶏がほとんど身動き出来ない「バタリーケージ」の中で卵を産み続ける事で、鶏の健康状態に問題が生じているとの指摘がなされていました。
具体的には、翼や脚の骨は平飼いに比べて確実に細くなり、他の飼育方法に比べて鶏の死亡率が高くなったり、内臓や糞からサルモネラ菌が検出される頻度が高くなったりするという研究報告がなされているそうです。これは継続的にかかる強いストレスが原因と考えられているそうです。又、ストレスは他の鶏への攻撃行動につながるため、くちばしの切断も行われているそうです。中には全身の毛が抜け、しっぽは骨がむき出し、ケージで体がこすれ、あちこち擦り切れている鶏もいるそうです。
この様な問題から、EUではバタリーケージを2012年に禁止し、他のすべてのケージ飼育も2027年までに廃止する規制の導入を約束しているそうです。
又、米国では鶏のケージでの飼育の割合が2016年には90%だったそうですが、2028年には30%程度まで減少すると予測されているそうです。
一方、日本では畜産動物の福祉についての法規制があまり無いらしく、アジア諸国や南米諸国と比べても遅れているそうです(現在日本の採卵養鶏農家の9割以上がバタリーケージ飼育)。
日本では鶏卵は物価の優等生と言われていますが、この様な悲劇が背景に隠れていると思うと手放しでは喜べませんね・・・。というより、鶏達の福祉を考えますと一大事です。
ARCでは他に、母豚を種付け前後から出産まで114日程度自分の体と同じ位のスペースで飼育する施設「妊娠ストール」の廃止運動にも取り組まれているそうです。妊娠ストールでは母豚が振り向くことも出来ない完全な拘束状態でキーキーと鳴き声をあげているそうです・・・。
これらの問題を踏まえて、環境や社会問題に配慮する「ESG投資」の一環として、世界では動物福祉に配慮する企業に優先的な投資を行う潮流が生まれているそうです。
日本でも現在、ケージ飼育された鶏卵を使わない「ケージフリー宣言」をする企業が大手の外食チェーンや外資系ホテル等約190社にのぼるそうです。豚の妊娠ストールについても、食肉加工大手の日本ハムが妊娠ストールの2030年度までの廃止を決定されたそうです。同業他社も多くが追随する姿勢を見せておられるそうです。
畜産動物の福祉向上は生産コスト上昇を伴うと思われますが、社会を動かすのは民意だと致しますと、結局そのコスト上昇を私達消費者が理解して受け入れられるのかどうかにかかっているのかもしれませんね。
しかしながら、です。私達動物にとって究極の福祉とは何でしょうか・・・?誰だって殺されたくはないのではないでしょうか・・・?と致しますと、私達人類の肉食文化にも大きな課題が突き付けられているのかもしれません。
一寸の虫にも五分の魂と致しますと、畜産動物の宿命的悲哀は如何ばかりでありましょうか?
私達人類の食文化の持続可能性を考えましても、肉食文化の再考は不可避なのかもしれません・・・。

寄付送迎:堀口

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