2023/10/01伝統文化と動物虐待

過去の新聞(2023年8月3日付朝日新聞朝刊)に日本の伝統文化における動物の取
り扱いをめぐる記事が掲載されていました。

記事によりますと、日本の伝統行事ではしばしば動物が登場しますが、動物愛護の
意識が高まっている昨今、動物虐待ではないかと批判される場合があるそうです。

例えば、三重県桑名市の多度大社で催される県無形民俗文化財「上げ馬神事」は、
若者が馬に乗り坂を駆け上って高さ約2mの土壁越えに挑み、その成否で農作物の出
来を占う伝統行事で700年近い歴史があるそうですが、近年は動物虐待等の批判を受
けて、馬を興奮させるための薬物の使用をやめたり、土壁の高さを低くしたりといっ
た改善策が講じられてきたそうです。ところが、4年ぶりに開催された今年は、坂を
上がる前にロープでたたかれる等した馬や、坂の途中で転倒し骨折して殺処分された
馬がいたそうで、動物虐待等の批判が殺到し、三重県も馬に無理を強いる神事の内容
を改めるよう助言したそうです。これを受けて大社側は来年以降内容を見直すことに
したそうです。

そもそも、日本の伝統文化と動物虐待を巡る問題は、動物愛護法の前身である動物
保護法の立案時(1973年)から議論があり、当時の国会審議では沖縄県等の観光名物
「ハブとマングースの格闘」や高知県の「土佐の闘犬」等が虐待にあたるかどうかの
質疑に対して、いずれも「歴史的な意味がある」といった理由で虐待には該当しない
との趣旨の答弁がなされたそうです。その後動物愛護の意識の高まりとともに法改正
が重ねられ、動物愛護法に名称が変更されて厳罰化も進み、2020年の法改正で「外傷
が生じる恐れのある行為をさせれば虐待に当たる可能性がある」と明記されて虐待の
定義も明確化され、例えば「ハブとマングースの格闘」は沖縄サミット開催(2000
年)前後に沖縄県が「ハブとマングースを闘わせない」内容への変更を促す指導を主
催者側に行った結果行われなくなり、「土佐の闘犬」も2017年以降は行われていない
そうです。一方、新潟県小千谷市で行われている国の重要無形民俗文化財「牛の角突
きの習俗」は、負傷した動物への適切な保護を義務づけた2013年の法改正をきっかけ
に獣医師が会場に常駐するようになり、牛を過度に傷つけないための配慮から「引き
分けにする」「角は加工しない」という決まり事が慣習的に引き継がれてきているそ
うです。

動物愛護の世論が高まることによって伝統文化がより良くなるといいですね。

寄付送迎:堀口

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