2024/01/21シカとの共存の道

過去の新聞(2023年10月30日付、2023年11月7日付、2023年11月25日付朝日新聞朝
刊)に、国の天然記念物「奈良のシカ」に関する記事が掲載されていました。
記事によりますと、奈良市の奈良公園内にある春日大社では、祭神が神鹿に乗って
きたと伝わり古来から鹿は保護の対象となってきたそうですが、戦後頭数が激減した
ため1957年に合併前の旧奈良市全域の鹿が国の天然記念物に指定されたそうです。と
ころが、1970年代に畑を荒らす農業被害が問題化し、解決策として奈良公園とその周
辺(重点保護地区と保護地区)では鹿を保護する一方、その外側は緩衝地区として人
身被害や農業被害をもたらした鹿は捕獲されて施設内に収容され生涯にわたり管理さ
れる事になったそうです(緩衝地区内で捕獲収容された鹿は自然に戻されても再びわ
なにかかってしまうそうです。なお、緩衝地区のさらに外側は管理地区として鹿は駆
除の対象となったそうです)。施設内の鹿(病気やケガで保護された鹿を除く)は約
240頭にのぼり、雄と雌それぞれ広さ約2500㎡の特別柵内に収容され、限られた予算
と人手で管理が行き届かないらしく、2023年8月から9月にかけて施設内の獣医師か
ら「餌が質量とも不十分で、競争に負けた弱い鹿は雄だけでも毎年50頭以上が極度に
やせて衰弱死している」と奈良県と奈良市に内部告発があり、県と市の双方が実態調
査に乗り出したそうです。
奈良県は収容されている約240頭の鹿は「総じて痩せた傾向にある」と確認し、
「衛生的な水が飲めない、清掃が行き届いていない等動物福祉における国際的な五つ
の指標すべてに抵触している」と認定し、「餌の量は不足していないが栄養価の低い
乾燥牧草が主体で餌場が1か所しかなく弱い個体が餌にありつけず、適正に飼育でき
る頭数も超過し、収容環境は不適切」と認めたそうです。
また奈良市も「栄養不良の個体が見られ、衰弱による死亡が多い」「鹿の頭数が過
密状態」「飼育状況は不適切」と認め、管理している一般財団法人「奈良の鹿愛護
会」に対し、清潔な水の確保や排泄物の清掃等衛生面の改善と衰弱を防ぐための方針
と計画を立てるよう指導したそうです。また解決策として、鹿が駆除の対象となる管
理地区の拡張も検討される可能性が示唆されたようです。
人とシカが共存するために、知恵をしぼって駆除に頼らない道をこれからも模索し
て頂きたいと思います。

寄付送迎:堀口

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