2023/12/22クマとの共存の道
最近の各種報道によりますと、2023年は全国的に例年以上にクマの市街地出没が多く
発生し人身被害が過去最多ペースと言われています。主な原因として2023年は食料の
ドングリが不作であったり北海道知床半島では小川の河口から食料となるカラフトマ
スが激減したりと異常気象の影響がうかがわれますが、その他の原因として過疎化に
伴う里山の荒廃や耕作放棄地の増加で丘陵地の茂みが市街地に迫りクマの分布域が拡
大している事もあげられています。そして人里の柿の実・栗の実や生ゴミにも誘引さ
れて市街地に出没しているようです。また、北海道では1980年代まではヒグマによる
人身被害や農業被害を防ぐために駆除を進めてきたそうですが、その結果ヒグマの個
体数減少を招き、環境保護や生物多様性の観点から1990年以降ヒグマの駆除(春に行
われる駆除)が禁止されたそうです。その結果、ヒグマの個体数は駆除が禁止された
当初から比べて現在では倍増したそうです。個体数の増加も市街地出没増加の一因に
なっているようです。
また、クマは本来草食傾向が強いそうですが、木の実等が不作の中で野生動物の死体
を口にすることで肉の味を覚え肉食に傾くこともあるようです。NHKの報道番組によ
りますと、北海道東部で牛を襲い続けたヒグマ「OSO18」も遺骨の分析結果から牛を
襲い始める少し前から常に肉を食べていたことが判明したそうです。OSO18は2023年7
月に駆除された際体は痩せ細っていたそうですから、やはり木の実等の食料に困って
いたと思われます。知床半島では2023年生まれの子グマは7~8割亡くなっているそう
です。
ここでも人間の営みによる環境破壊に翻弄される動物達の姿が垣間見えますが、人身
被害防止の対策としてあげられているのは、人由来の食べ物(生ゴミ等)を屋外に放
置しない事や、クマが暮らす奥山と市街地との間の緩衝地帯での駆除活動も検討され
ているようです。
野生動物の個体数調整のための駆除活動は人が野生動物と共存していく上でしばしば
検討される方策のようですが、生命を奪う駆除活動には批判もあります。そのような
中、2023年11月21日付朝日新聞朝刊の記事によりますと、人里に近づくクマを山に追
い返す「ベアドッグ」と呼ばれる対策犬が長野県軽井沢町で2004年に導入され、公共
集積所のゴミ箱をクマが開けられないように改良したり電気柵を設置したりすること
等もあわせて功を奏し、2011年から人の生活域での人身被害がなくなっているそうで
す。
人とクマが平和に共存していくために、知恵をしぼって駆除に頼らない道をこれから
も模索していくことが望まれます。
寄付送迎:堀口