2021/06/06吾輩は獅子である

吾輩は犬である。名前はおしし。

老犬部屋に暮らしておる。
常に自由気ままな吾輩の楽しみは何よりも食事である。
吾輩、うぶなので知らない人間にはあまり近寄らない。だが、吾輩の賢いところは、ご飯の時間と誰がくれるのかをわかっているところである。
朝、ご飯配り候補の人間がやってくる。吾輩は毎朝、その人間に対しては猛烈なアピールをする。自分の定位置につけてもらうまでしつこく迫る。人間も根負けして吾輩を定位置に連れて行く。吾輩、歯が少ないのでご飯は柔らかいものを食べておる。食べすぎを注意され、しばしば減量をさせられるのだが…。
日中は部屋の端で丸まってのんびりしておる。
昼時、人間たちが食事をしにやってくる。
この時間は吾輩の勝負の時間でもある。

吾輩は同郷出身のビストロのように人間の膝によじ登る芸当は持ち得ていない。別の方法で人間に攻撃をしかける。
吾輩の武器はなんといっても黒水晶のような瞳である。この瞳から熱い視線を送ればその人間はおやつをくれる…筈である。
例の如くひねくれ者がやって来た。頭の滑らかな黒シャツとあいも変わらず独特な柄の服を着ている髪嵐もやってきた。吾輩は黒く輝く視線をぶつける。何故だかわからぬが、常連のこの3人は一筋縄ではいかないようだ。
そんなことを思っていると、最近新しい人間が入ってくるようになった。このこけし少女は吾輩の瞳攻撃にすこぶる従順である。毎日おやつをくれる。吾輩は義理堅い。おやつをくれれば舌でお礼をしっかりさせてもらう。
吾輩の心からのお礼を受けているのにもかかわらず、何故だかこけし少女は毎回小さな悲鳴をあげながら他の子におやつをあげに行ってしまう。

何故吾輩のお礼をしっかり受けぬのか、失礼な人間である。

読者の諸君、吾輩の黒水晶のような瞳攻撃をくらうがよい。吾輩、いつでも食べ物は大歓迎である。

飼育班:島田

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