2021/04/19ある無鉄砲の一生

ある無鉄砲の一生
吾輩は犬である。名前は鉄平。北海道からやってきた。

施設の中のあちこちでの生活を経て、介護部屋に落ち着いた。


元来の無鉄砲で、叱られてばかりであった。
特定の犬は嫌いで、近づくだけで喧嘩をしてしまう。その度に怒られる。そのくせ喧嘩をしないと、お前元気ないなと心配してくるひねくれ者もいる。このひねくれ者はやたらと吾輩にかまってくる。

 

外犬舎にいた頃も、犬ハウスにいた頃も、ふれあいサークルにいた頃も、老犬部屋にいた頃も、そして介護部屋でも。


数年前のイベントでは、まだ新人だったくせに、シャンプー嫌いな吾輩を洗おうとして先輩の手を煩わせていたのを覚えている。
その後も時間があれば吾輩が嫌うブラッシングをしてくる。でもそのひねくれ者も慣れたのか、ブラッシングも吾輩を怒らせないようにするようになった。いや、吾輩が寛容なだけなのだが。


老犬部屋に引っ越したばかりの頃、吾輩はとにかく頻繁にルームメイトと喧嘩をして怒られた。でもそのひねくれ者だけは何故かいつも吾輩をかばった。そのひねくれ者は同僚から贔屓だと笑われておった。笑われているくせにひねくれ者本人も何故だか満足そうに笑っていた。


このひねくれ者、一時的に吾輩がリード嫌いになった時もいろいろな方法で吾輩にリードをつけ、散歩に連れて行った。吾輩、外は好きなのである。介護部屋に移っても吾輩にちょくちょく会いにきた。


おそらくそのひねくれ者は吾輩に薄っぺらい四角なものを向けてカシャカシャという音を一番立てて来た男でもある。外犬舎の頃から介護部屋に落ち着いた時までほんとに何回も何回もカシャカシャカシャカシャ…。
でもその度におやつをくれたり撫でたりしてきてくれる。


吾輩、今までいろいろ無鉄砲なことをしてきた。オペだって頑張ったのだ。そろそろ疲れてきた。ゆっくり休むことにする。
ただ、やたらと吾輩に構ってくるひねくれ者は大丈夫だろうか。

拝啓 鉄平様
鉄平、お疲れさま。
今まで散々わんぱくしてきたんだから、こっちのことは気にしないで、あとは全力でのんびりしてくれればいいんだよ。
この施設で働くまで犬ともまともに触れ合ったことのなかった僕だけど、鉄平のおかげで今まで気づかなかった大切なこととかも学べたんだ。
ありがとう。

飼育班:島田

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